国会短信 国会短信
経済産業省発足に当たって
                平成13年1月6日
経済産業大臣
平 沼 赳 夫
  
(経済産業省の発足)
 本日、経済産業省が発足いたしました。
 我が国経済は、戦後の復興期から貿易・資本の自由化と高度経済成長の時代、そして二度の石油ショック、円高、バブルの時代とその崩壊など、幾多の試練を経てきました。昭和24年に前身の商工省から設立された通商産業省は、この半世紀、一貫して、戦後の我が国経済の歴史とともに歩み、通商の振興や経済・産業の発展に取り組んでまいりました。
 新たな世紀の幕開けとともに、通商産業省は、「民間の経済活力の向上」、「対外経済関係の円滑な発展」、「エネルギーの安定供給」を通じて「経済と産業の発展」を図るという幅広い任務を担う組織として、経済産業省に生まれ変わりました。

(時代認識と行政改革の理念)
 時代認識と行政改革の理念に照らし、ここで改めて、経済産業省の果たすべき役割について考えてみたいと思います。
 
 行政改革会議の最終報告(平成9年12月)に、「より自由かつ公正な社会の形成を目指して『この国のかたち』の再構築を図る」と謳われています。
 我が国は、−「今、国家、社会の在り方の基本にかかわる困難な諸課題を抱え、いかにしてこれに果敢に取り組み、光輝を放つ21世紀日本の展望を切り拓くことができるかという重大な岐路に立たされている」−「この国を形作っている『われわれ国民』自身の在り方」として社会の再構築を考え、「個別の政策・制度改革」ではなく「戦後の我が国の社会・経済システム全体にわたる大転換」を図っていく−これが、今回の行政改革の基本となる理念です。

 経済産業省は、こうした理念の下、経済と産業の発展を任務とし、経済構造改革の推進に取り組むべき役割を課せられました。経済産業省が生まれることとなった時代の背景に目を向けると、われわれに期待される二つの大きな役割が浮かび上がってきます。

 第一には、各経済主体が存分に活躍できる場や環境を整備することです。
 我が国を取り巻く環境が大きく変化する中で、国と国、企業と企業、企業と国民、企業とNPO、若者と高齢者、都市と地方など、様々な経済主体の価値観が多様化し、その利害関係はますます複雑になってきています。
 こうした様々な経済主体、国民自身がその持つ力を最大限引き出して存分に活躍できる<土俵>を整備することが求められているのです。また、国境を越えた企業の活動や人の流れが今後一層進んでいくことは間違いなく、このような環境整備を進める際には、その内容とスピードが、国としての競争力を左右するという認識を欠かすことはできません。

 第二には、総合的な視点から、経済・産業に係る制度設計を行うことです。
 環境・エネルギー制約、雇用、福祉、中央と地方の関係、財政などにかかわる様々な制度は、互いに密接に絡み合って経済社会を構成しています。従って、それぞれの制度ごとの課題に対して個々に制度の設計を考えるという手法には、自ずと限界があります。
 21世紀の我が国の発展基盤となる制度の構築には、制度の歪みを各分野ごとに正していくとともに、経済・産業に係る諸制度を総合的に捉えることがきわめて重要となっています。このような視点で取り組んで初めて、行革会議の報告書にも謳われた「戦後の経済社会システムの大転換」を図ることが可能となります。

(経済産業省の役割)
 各経済主体が存分に活躍できる場や環境を整備すること、総合的な視点から、経済・産業に係る制度設計を行うことは、経済産業省の重要な役割であります。経済運営や経済構造改革から、環境・エネルギー問題、イノベーションとそれを支える技術開発、消費者問題、地域経済や中小企業、さらには対外経済関係まで、幅広い分野において、このような任務を遂行していくことを求められています。

 取り組むべき課題が山積する中、新しい時代に即した行政ニーズに適切に対応する組織を整備する観点から、経済産業政策や通商政策を担当する部局の再編・強化を始め、消費経済部や地域経済産業グループ、原子力安全・保安院の設置など、内部組織の改革も実施いたしました。
 それぞれの部局が、国民の行政ニーズに応え、その役割を存分に果たすことが期待されています。

経済産業省発足に当たっての三つの挑戦

 私たちは、経済産業省の一員として、21世紀初頭の我が国の針路を切り拓いていくため、経済政策、産業政策、通商政策、エネルギー・環境政策、産業技術政策、情報化政策、中小企業政策等、経済産業省がかかわるあらゆる政策分野において、果敢な挑戦が求められています。さらに、我が国は、内外の経済が一体化する中で、グローバルな視点から21世紀の国際経済秩序の構築に積極的な貢献を果たす使命も担っています。
 ここでは、特に重要だと思われる三つの挑戦について申し述べたいと思います。

第一の挑戦

 〜中長期的な経済成長シナリオの構築への挑戦〜

 まず、第一に、中長期的な経済成長シナリオの構築についてであります。
 
 地球環境問題に対する認識の高まり、急速に進む少子・高齢化、国民の価値観の多様化、未だ困難な状況から十分に脱していない経済動向、厳しい財政状況など、我が国を取り巻く環境は不透明さを増しています。こうした状況の中、国民が、この国の将来や自分たちの行く末に対する不安を一向に拭えないがゆえに、活路を見出すための新たな一歩の踏み出しを躊躇してしまうことを、私たちは何よりも恐れなくてはなりません。
 我が国経済が将来に亘り安定的に発展するためのグランドデザインを描くことが、今こそ求められているのです。

 昨今の内外におけるIT革命や技術革新の進展などを踏まえれば、我が国経済は、今後、従来とは質的に異なる成長の姿を見せる可能性を秘めております。このような認識に立ち、私は、我が国の潜在的な成長の可能性、エネルギー・環境制約と経済成長の両立、IT革命の進展、イノベーションの推進、国民の真の豊かさと将来に対する信頼感の形成など、幅広い検討を踏まえ、様々な構造改革を進めることを通じた中長期的な経済成長と我が国の発展のための総合的シナリオを描くことに挑戦したいと考えます。また、その際には、雇用、社会保障・福祉、中央と地方との関係、財政の持続性といったことも視野に入れることが重要です。
 さらに、経済産業省として、各分野における様々な経済主体の息吹きを間近に感じ、内外の経済社会・産業の実態をきめ細かく捉えるとともに、中小企業の創業とイノベーションを我が国経済の活力の源泉として最大限活用することにより、実効性のあるシナリオを描かなくてはなりません。

第二の挑戦

 〜環境・エネルギー制約への挑戦〜

 次に環境・エネルギー制約の克服についてであります。

 この四半世紀余り、私たちは、経済成長と環境保全の要請とをいかにして両立させるかに腐心し、経済をとるか環境をとるかの二者択一的な議論もしてまいりました。
 確かに、環境・エネルギーの制約は、リスクやコストでもありますが、見方を変えれば、それへの対応は新たな付加価値を生み出す可能性を秘めたものであり、隠れたビジネスチャンスであります。今日、こうした「制約」への挑戦を先取りした企業が、市場において存在感を高めてきていることは周知のとおりです。
 環境・エネルギー制約の解決のためには、先進的な技術を活かした製品、サービスの提供や、環境等に配慮した企業や消費者の合理的な行動をいかに引き出すかが鍵を握ります。そのためには、規制、自主的な取組、経済的手法などを、その対象分野の特徴とそれぞれの手法のメリットやデメリットを考え、バランス良く組み合わせる政策パッケージについて、「聖域」を設けず早急に検討を進める必要があります。

 特に、代表的な経済的手法であるエネルギー・環境関連税制や、排出量取引制度などは、他の様々な手法との有機的な連携を図るなど、制度の設計如何によっては、各種エネルギーのユーザーや消費者が多様な商品やエネルギーの選択肢からコストも勘案して自由に選択することを可能とし、創意工夫を活かした企業の自主的な取組をさらに効率的、効果的に進める制度となる可能性があります。
 様々な関係主体の利害や制度が複雑に絡み合う課題でありますが、私は、環境・エネルギー制約への挑戦が市場メカニズムを通じて競争的に行われ、企業間、産業間、エネルギー間の新しい競争を成長ダイナミズムに結びつける有力な方策のひとつとして、総合的な検討を進めることに挑戦したいと考えます。

第三の挑戦

〜経済・産業の発展を支えるイノベーションへの挑戦〜

 三点目は、経済・産業の発展を支えるイノベーションについてであります。

 イノベーションは、産業競争力の源であり、経済・産業の発展を支えるものであります。産学官の有機的連携の下、創造性に富むイノベーションが沸々とわき起こるような環境整備や、未踏領域へのあくなき挑戦が、今、求められています。イノベーションの成果が産業活動や国民生活の中で次々と実用化していくことは、産業競争力強化の観点のみならず、環境・エネルギー制約の克服、国民の安全・安心の確保、高齢化社会への対応等において、国民生活全般に広く便益をもたらすものであります。
 このためには、将来の経済・産業の発展を支える技術分野に戦略的に資源を配分されることが必要です。民間や大学等も含めた我が国全体における研究人材の流動化、研究・教育機関改革などの、研究開発システムの構造改革にも早急に取り組むべきであります。
 もとより、政府研究開発投資についても、これを効率化すべく、重点分野の設定、評価の徹底、研究開発管理体制の見直し等が必要と考えます。
 また、ダイナミックな技術革新の動きに的確に対応した知的財産制度の整備、運用を通じて、研究開発などの知的創造活動の成果を保護するとともに、その利用を促進していきたいと考えます。

(経済産業省参与会の設置)

 我が国を取り巻く環境が大きく変化する中で、経済産業省がその任務を全うするためには、自らの政策評価に積極的に取り組むとともに、内外の各層、各機関との対話の機会を多く持ち、外部の意見に謙虚に耳を傾け、その意見を積極的に吸収していくことが必要であります。
 その一環として、今般、各界で多くの経験と高い識見を有する方々に忌憚のない御意見を頂く場である経済産業省参与会を設置することといたしました。
 我々は、このような場を通じて、経済産業省の政策全体を貫く基本的な方向、公に奉仕する者としての姿勢等について常に顧みることが必要であると考えます。

(おわりに)

 今日、我が国が置かれた状況は決して楽観できるものではなく、私たちの歩んでいく道のりは、決して平坦なものではありません。
 しかしながら、先人の成し遂げてきた成果に鑑みれば、我が国が未来に向けて果敢な挑戦を行う精神があれば、必ずや途は拓けるものと確信しており、初代経済産業大臣として、全力を傾注してまいる所存であります。生まれ変わった経済産業省の新しい「挑戦」により、21世紀日本の明るい展望を共に切り拓くことができるよう、国民各層、関係各位の御支援、御協力をお願いいたします。



戻る


address お問合せはこちらまで
info@hiranuma.org

Copyright(c)2000 HIRANUMA office - All rights reserved